公開日:2025/02/10
カテゴリー:その他
そもそも相続登記をしないとどうなる?
相続が発生した際、不動産の名義を変更する「相続登記」は必須の手続きです。この登記を怠ると、さまざまな問題が生じる可能性があります。本記事では、相続登記をしないことで生じるリスクについて解説します。
1. 相続不動産を売却できない
相続登記を行わないと、不動産の名義は故人のままになり、売却することができません。不動産の売買には、登記簿上の所有者が明確であることが必須です。仮に登記をせずに売却を試みても、買主や仲介業者、司法書士などが契約を進めることはできません。
また、不動産登記は所有権の履歴を示す重要な記録です。もし登記を飛ばして買主に直接名義変更を行おうとすると、不自然な形で権利移転が行われたことになり、法的トラブルに発展する可能性もあります。そのため、必ず相続登記を行い、所有権の移転を正式に記録する必要があります。
2. 相続関係が複雑化する
相続登記をしないまま時間が経過すると、相続関係がさらに複雑化します。相続登記には、戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要ですが、これらを準備しないまま放置していると、相続人が亡くなり、新たな相続が発生することがあります。
世代を超えて相続が繰り返されると、相続人が増えて関係が希薄になり、遺産分割協議がスムーズに進まなくなる恐れがあります。さらに、関係者が増えれば増えるほど、必要な書類の取得や手続きが煩雑になり、手続き自体が困難になってしまいます。
3. 認知症などによる遺産分割協議の困難化
相続人の中に認知症を発症した人がいると、遺産分割協議が難しくなります。現在、日本では高齢者の4人に1人が認知症を発症すると言われており、決して珍しいケースではありません。
認知症などにより判断能力が不十分な場合、その人に成年後見人をつける必要があります。成年後見制度を利用するためには家庭裁判所の手続きを経る必要があり、時間や費用がかかります。また、成年後見人は本人の利益を最優先とするため、遺産分割において柔軟な対応が取りづらくなる可能性もあります。
4. 他の相続人の債権者による差し押さえリスク
相続登記を行わずに放置すると、他の相続人の債権者によって差し押さえられるリスクも発生します。たとえば、共同相続人の一人に借金や税金の滞納がある場合、債権者はその人の法定相続分を差し押さえることができます。
このような場合、債権者が相続登記を代位登記し、法定相続分を差し押さえることが可能です。差し押さえが発生すると、遺産分割協議が思うように進まなくなり、最悪の場合、強制競売が申し立てられる可能性もあります。
5. 他の相続人が勝手に持分を売却するリスク
相続登記が完了していない状態でも、法定相続分の範囲内であれば、相続人の一人が自分の持分を売却することが可能です。その結果、意図しない第三者が共有者となり、トラブルに発展することがあります。
実際に、共有持分を安く買い取る業者が存在し、その後、共有物分割請求を行うケースもあります。このような請求が裁判所に持ち込まれると、最終的に不動産の売却を余儀なくされることもあります。家族間でのトラブルを防ぐためにも、早めに相続登記を行い、適切な遺産分割を進めることが重要です。
相続登記は早めに行うべきなんです。
相続登記を放置すると、売却ができない、相続人が増えて手続きが複雑化する、認知症などで協議が難しくなる、債権者に差し押さえられる、他の相続人が勝手に持分を売却するなど、多くのリスクが発生します。
「今すぐ登記しなくても大丈夫」と考えがちですが、後回しにすることでさらに大きな問題が生じる可能性があります。
3年以内に相続登記を行うべき理由とは?
1. 相続登記の義務化(2024年4月施行)
- 義務化の背景: これまで相続登記に罰則がなかったため放置されるケースが多く、トラブルの原因となっていました。
- 新ルール:
- 相続後3年以内に登記しないと → 10万円以下の過料対象
- 住所変更後も未登記で2年以上放置 → 5万円以下の過料
- 対応のポイント: すでに所有している不動産も対象。早めの手続きを推奨します。
2. 3年以内の売却で節税メリット
相続不動産を3年以内に売却すると、譲渡所得税を抑える特例が利用できます。
主な2つの特例:
取得費加算の特例
- 内容: 相続税の一部を不動産の取得費に加算できる。
- 節税効果: 課税譲渡所得が減るため、所得税・住民税が軽減。
- 適用条件: 相続税申告後、3年以内の売却が必要。
被相続人居住用財産(空き家)売却の特例
- 内容: 最大3,000万円の譲渡所得控除が可能。
- 主な条件:
- 被相続人が居住していた家であること
- 耐震基準を満たすこと
- 親族間での売買ではないこと
3. 特例利用の注意点
- 併用不可: 取得費加算の特例と空き家特例は併用できません。どちらが節税効果が高いか検討が必要。
- 3,000万円控除の併用制限: 自分のマイホーム売却での3,000万円控除とは、同年内の併用が制限されるため注意。
手続きに必要な書類(一例)
- 相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書
- 耐震基準適合証明書(空き家特例の場合)
まとめ
相続不動産の売却は「3年以内」が節税の鍵です。早めの手続きで余計な税金や罰則を回避しましょう。詳細は税務署または税理士に相談することをお勧めします。
※2025年2月10日現在の税法に基づいております。